これは素晴らしい番組だった。

トランプ派と反トランプ派が集まり、激論を繰り広げる。反トランプ派は、トランプに対して強い怒りを持っていた。一方で反トランプ派は、トランプの支持者に対してステレオタイプ的な蔑視をしていること(そして実際には、トランプ支持者の中にも知的な、バランスの取れた人が多くいること)が番組の中で明らかになっていく。

一方でトランプ支持者は、反トランプ派の言説に対して「メディアに流されているだけで、事実に基づいていない」というフラストレーションを抱えていた。一方で反トランプ派のある起業家は、「トランプのTwitterをフォローした結果、彼の言うことには嘘が多いと分かった」と冷静に指摘する。

議論が激しくぶつかった後に、サンデル氏が出した質問が、これ(写真)だった。

アメリカの分断はメディアとトランプのどちらの責任が重いか?

多くの人が「メディア」の方に手を上げた。

皆、家族や親せきの中にトランプ派と反トランプ派がいる。感情的に意見が対立し、サンクスギビングの親戚の集まりですら、取りやめた家庭もあったという。

どうしてこんなになってしまうのか。

参加者の中からは、「こんなに時間をかけて、両方の意見を聞かせるテレビ番組は世界にない」という声があがった。「日本以外にはね」と茶々を入れる人がいて、笑いの声が広がった。

一方で、この激論を経て、相手側に対する認識が変わったという感動的な意見が聞かれた。さらに、夫婦でトランプ派 / 反トランプ派に分かれつつ、しっかりとコミュニケーションを取っているという人もいた。そして、同じ工場で働いているカード・ゲーム仲間で、今回はトランプ派 / 反トランプ派に分かれて参加した2人がいることが明らかにされた。

サンデル教授は、以下のように結論した。

最近のアメリカの政治を見るにつれ、格闘技のようだと思えることがある。今日どちらのグループからもその理由として聞かれたのは、アメリカの市民同士のきちんとした対話が足りないという意見だった。どうやら私たちは、お互いのことをきちんと理解していないのではないか。

ではどうすればいいのか?

今日、長い時間をかけた皆さんとの対話で私が学んだのは、異なる意見を持つ相手に向き合い、耳を傾けることの大切さだ。異なる意見があることは、民主主義が旨くいっていないことを意味しない。異なる意見に耳を傾けることで、対話を深めることができる。相手がどのような人物なのか、その背景を深く理解することができる。

個々の対立を超えて、民主主義に必要なことを、皆さんが見事に実現してくれた。今国内がどんな難しい局面にあろうと、アメリカの民主主義の未来に希望を持つことができることを、私たちに教えてくれた。

(拍手)

では日本ではどうだろう。私たちはどうすればいいのだろう。私自身はどうすればいいのだろう。

この番組を見て、私が決めたことがある。それは、以下の3原則だ。

・相手を責めずに、自分と異なる意見が生まれた背景を理解する
・自分の意見を明確に述べて、相手の批判にさらす
・事実に基づいた発言をする

この3つを徹底的に貫けば、社会の「分断」は(メディアのいかんにかかわらず)国民レベルで緩和されていくのではないだろうか。

以上、視聴者感想文でした。この素晴らしい番組を作ってくれた、コーディネーターの杉田晶子さんに心から敬意を表しつつ。