こころとからだを病んで
やっとあなたの列に加わった気がする
島の人たちよ 精神病の人たちよ
どうぞ 同志として うけ入れて下さい
あなたと私のあいだに
もう壁はないものとして

(神谷美恵子1975「同志」)

精神医学者の神谷美恵子が、死の4年前に書いた連作「病床の詩」より抜粋。

2016年の読書も神谷美恵子から始まったが、2017年も同じスタートだ。みすず書房の「神谷美恵子の世界」を読んでいる。

神谷美恵子は、(当時不必要に)隔離されていたハンセン病患者の施設を定期的に訪れ、患者たちの精神的なケアを行っていた。患者との関わりを「よろこび」と記し、「彼らの心の友とさせて頂いたことが光栄である」と述べた。

生産的な方法で社会に貢献できない患者に、神谷美恵子は温かいまなざしを注いだ。「人間の存在意義は、その利用価値や有用性によるものではない。野に咲く花のように、ただ『無償に』存在しているひとも、大きな立場からみたら存在理由があるにちがいない」と記した。

そんな神谷美恵子が、自分自身病を得て入退院を繰り返す中で書いたのが、冒頭の詩だ。神谷美恵子は、患者の「同志」になりたかったのだろう。健常者である自分に長年やましさを感じていたのかもしれない。