自分がハーバード・ビジネス・スクールに入学したのは、何かの間違いだったと、私は感じていた。自分だけでなく、おそらく入学者のうちかなりの割合の新入生が、同じようにナーバスになっていたと思う。

そんなことを思い出したのは、スタンフォード大学のティナ・シーリグ氏が書いた「夢をかなえる集中講義」に、以下のような記述があったから。

「毎回、スタンフォードのビジネススクールの新入生に『自分は間違って入学を認められたと思う人?』 と尋ねると、三分の二の学生がすぐさま手を挙げるそうです。」

「何かを成し遂げても、自分の実力ではないとか、自分は成功に値しないといった感情を抱くことはインポスター・シンドロームと呼ばれますが、こうした感情はきわめて一般的です。人生のどこかの時点でインポスター・シンドロームを経験したことのある人は、70%にものぼります。舞台が大きすぎて、自分はふさわしくないと感じる人たちがこれほど多いとは驚きです。」

(「スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義」ティナ・シーリグ)

このインポスター・シンドローム的態度と好対照だったのは、GEのCEOであるジェフ・イメルト氏だった。
イメルト氏の前任者は、世界を代表するカリスマ経営者である、ジャック・ウェルチ氏だった。そのウェルチ氏が、21歳も下のイメルト氏を次期CEOに指名し、イメルト氏と一緒に記者会見を行った。

その時のイメルト氏の様子を、テレビで見たのを覚えている。

笑顔だった。

落ち着き払い、リラックスしていた。

自分は自分のやり方で行ける。そんな静かな自信を感じさせていた。

イメルト氏はおそらく、インポスター・シンドロームとはかけ離れた人物だったのだろう。

いや、ひょっとしたら、イメルト氏は自分の力が、ジャック・ウェルチには到底及ばず、GEのCEOとしてもふさわしくないと思っていたかもしれない。

しかし同時にイメルト氏は、自分自身がリーダーとして成長する、その無限の可能性を信じていたのではないだろうか。だからあんなに静かに、微笑んでいたのではないだろうか。

現状の自分の力不足に対する謙虚。そして、自分の今後の成長の可能性に対する自信。この謙虚と自信を併せ持った人間に、私はなりたいと思う。