European Entrepreneurship Colloquium (欧州起業家教育研究会)に参加した。

そこに、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で学生から圧倒的な支持を得ていた、Prof. Walter Kuemmerle(クメリ)が襲来。集まった教育者向けに、ケースを2本回し、教えてくれた。

クラス冒頭にいきなり宣言。

「自分の質問に答える手が上がらなかったら、その時は全部レイジに答えてもらう。彼は、ハーバード時代の教え子だから。」

「あの時以来、レイジの髪型は変わっていない。自分の髪型も変わっていない。(と言いながら、ピカピカに禿げあがった前頭部から頭頂部をつるっとなぜてみせる)」

場を和ませるために、こういうオープニングもあるんだなあと、芸の細かさに恐れ入った。

クメリ教授のケース回しは、素晴らしかった。しかも今回は、ケースのファシリテーションの仕方についての解説を途中で混ぜながらのクラス。MBA在籍中は得られないリッチな体験だった。

途中でパレスチナの大学教授(50歳くらいの女性)が手を挙げて、「教室の右側ばかり指していないで、左側も指して下さいよ」と若干失礼なコメントをした。クメリ教授は、「OK。左側も指します。指摘してくれてありがとう。」と流した。

ところが、この教授のケータイが途中で音を立てて鳴り始め、しばらく止まらなかった。

ここでクメリ氏は、授業モードをいったん止めて、以下のコメントをした。

・さっきは、「左側も当てろ」と言ったが、考えてみると左端の人を既に4回指名している
・それに加えて、今度はケータイを鳴らしまくるとは。(会場爆笑)
・自分は授業中にケータイを鳴らした学生に対しては、即座にコールドコール(指名強制発言)をすることにしている

ここまで言ったところでクメリ氏は、少し表情を変えてこう言った。

「ところで、皆さんのクラスを、他の教員が見学にくることがあるかもしれない。その時には必ず、『誰が発言しているか』の記録を取ってもらった方がいい。それによって、自分の癖が分かる。」

「教員によって、男性ばかりを指したり、女性ばかりを指したり、背の高い人を指したり、いろいろな癖がある。自分の癖を知ることが重要だ。」

「ちなみに私は…右側に座っている人を多く指名する癖がある。あなた(パレスチナの教授)が言ったことは、正しかった。」

私は感動して、軽く身震いした。

授業を妨害するケータイの音。クラスの雰囲気が悪くなりそうなところを、笑いのネタにして切り返し、散々相手をいじった上で、最後に自分を落として相手を救い上げた。

しかも、超人気教授だったクメリ氏が、自分の弱みを冷静に把握して、それを修正すべく今も努力しているというこの事実。こちらも思わず、背筋が伸びる。
EEC