幸福について、ぼんやりと考えていた。「幸福」度合いを決める重要な要素(キー・ドライバー)は何だろう。

私は2012年、ピッツバーグの老人ホームに住み込みで働き、経営改善のお手伝いをしていた時。毎朝、毎晩入居者の方々(90歳前後)と食事を食べていた。

その中には、幸福そうな人と、さほど幸福ではなさそうな人がいた。

その差はどこから来るのか、私は2カ月かけて観察した。

その結果わかったのは、シンプルなこと。

第一に健康。私が一番敬愛していたフランクリン氏(95歳)は、いつも背筋を伸ばして、歩き回っていた。ビリヤードも楽しんでいた。車も運転できるのに、「周囲の人間が、自分の運転を止める」といってこぼしていた。彼は極めて幸福そうだった。

第二に、人間性。「気さくで、明るい」人の周りには、自然に仲間たちが集まり、子どもも集まり、孫も集まり、ひ孫までしばしばホームを訪れてきて…彼は非常に楽しそうだった。

また、おしゃべりではないものの深い心を持った男性もいた。彼は85歳を過ぎて老人ホーム内に恋人ができ、恋人との語らいが彼の人生に彩りを添えていた。

以上2点が、自分が学んだこと。おそらく3点目として、「充実した職業人生を生きたことに対する満足感」とかがあるのだろうと思うが…会話の中からは確認できなかった。あまり昔の仕事の話をする人は、私のテーブルにはいなかった。

ただし、社会や地域に貢献した活動については、喜びを持って語っていた人がいた。1929年の世界大恐慌について話を聞いた時に、「景気が悪かった」ということよりも、「景気が悪かったにも関わらず、皆で金を出し合って、地元の大学の巨大な建物を建てた」ということを語っていた人がいた。静かに、しかし誇らしく。
http://ja.wikipedia.org/wiki/学びの聖堂

老人から学ぶことは、極めて多い。終末期医療や介護に従事している人は、こういう学びを日々得ているのだろう。