世界銀行元副総裁の西水美恵子さんが、書いている。

「NGOヒマラヤ研究センターの会長が迎えてくれた。世銀が実験的に援助を始めた農村上下水道事業の遂行に携わっている。筋金入りのリーダーの目は、腹の底から燃えあがる炎に輝く、草の根の民を想う情熱に光ると、南アジアのNGO指導者たちから教わった。銅色に焼け、若さを裏切る深い皺に刻まれた高地人の彼の顔にも、その燃える目があった。」

(「国をつくるという仕事」 西水美恵子 英治出版)

この文章を読んで、かつて自分が心を揺さぶられた、ある「眼光」のことを思い出した。

それは、インドで巨大な眼科専門の医療機関を立ち上げた、Dr. Govindappa Venkataswamy(通称"Dr. V")のインタビューをビデオで見た時のこと。その創立者は、インドで眼病のために、盲人になる患者が多いことを憂えていた。適切な治療と早期の手術を行えば、視覚を失う必要はない。にもかかわらず、インドには盲人があふれていた。

そこで彼は、眼科の手術治療専門の病院を設立した。効率的なオペレーションを追求し、「まるでマクドナルドでハンバーガーが作られるように」次々に手術が行われることを目指した。

裕福な患者からしっかり治療費を取り、それを使って治療費を払えない患者の手術費を補てんするという戦略を立てた。単に社会的価値を提供するだけでなく、経済的にも収益が回るビジネスモデルを構築した。( "Aravind Eye Hospital, Madurai, India: In Service for Sight" Harvard Business School)

このDr. Vのインタビューをビデオで見た時、その眼光の鋭さに圧倒された。それは、燃えるような目だった。私が、ヘルスケア分野に進もうかと思い始めたきっかけは、あの「目」を見たことにある。全く非論理的な話で恐縮だが、それほどの衝撃を受けた。

自分は果して、どんな「目」を持って働いているのだろう。そして、今から30年後、どのような色の目をしているのだろう。