野茂はどうして、野茂たりえたのだろう。

1)野球が好き

元近鉄バッファローズのコンディショニングコーチだった、立花氏のコメントが興味深かった。

「野茂がこれだけの偉業を成し遂げた最大の要因はメンタルです。彼ほど野球が好きなやつは見たことがない。近鉄時代、膝でリズムを取りながらヘッドフォンで音楽を聴いていたときがあって、何を聞いているかと思ったら、西武の選手別の応援歌だった。あいつのことだから、それ以外の球団のCDも持っていたはずですよ。テレビゲームをやっていると思ったら、必ず野球ゲームですしね。」

「アメリカにわたって1年目のオフ、向こうで僕と一緒に買い物にいったとき、古着屋でワールドシリーズかなんかの記念の革ジャンを見つけたんです。そうしたら野茂は拙い英語で一生懸命、ディスカウントしてもらっていました。アメリカでは、ベースボールカードとか、ユニフォームのコレクションにも拍車がかかっていましたしね。」

(スポーツ・グラフィック NUMBER Vo.714「野茂英雄のすべて」)

2)不言実行

野茂氏のコメント。「僕には口で言うよりも、自分でやらなきゃ、という思いが強い。何事も本気でやっているつもりです。」 (同誌。二宮清純氏との対談で)

現在野茂氏は、社会人のためのチームを立ち上げ、遅咲きの野球人が成長する舞台を広げようとしている。野球界のために、評論家めいたコメントは一切せず、ひたすら自分なりのやり方で汗を流す。これが野茂スタイルなのだろう。

3)挑戦する勇気

野茂の挑戦は、アメリカ人の心をもとらえた。

「菊とバット」「東京アンダーワールド」などの著書で知られる、ロバート・ホワイティング氏のコメント。

「野茂はアメリカ人が称賛するタイプの男だ --孤高のアウトサイダーであり、口数が少なく、どんな挑戦にもひるまない。決してあきらめず、つねにベストを尽くす男。ジョン・ウェインやクリント・イーストウッドが、映画の中でそういう男を演じている。」

自分の大好きな道を、自分の信じるスタイルで、黙々と歩き続けた男の肖像。引退してもなお、私達の心をとらえて離さない。

(スポーツ・グラフィック NUMBER Vo.714「野茂英雄のすべて」)