ポール・ニューマンが亡くなったというニュースがテレビから流れてきた。妻と私が同時に思い出したのは、"Newman's Own"というブランドで知られた、ドレッシングだった。

ポール・ニューマンは、昔からドレッシングの味にうるさい男だったという。なんせ、レストランで出されたサラダ・ドレッシングの味が気に入らず、酢や油などドレッシングの材料を持ってこさせて、自分でドレッシングをブレンドしてサラダにかけた…というエピソードが残っているほどだ。

その味覚の鋭さを活かし、俳優としての名声でレバレッジをかけることで、ポール・ニューマンは社会起業家として大きな業績を残した。現在、年間数百億円を売り上げているドレッシングのブランド"Newman's Own"から挙がる税引後利益の全額が、教育などの慈善事業に全て投下されている。(

その成功は、ビジネススクールの教材としても取り上げられている。("Newman's Own, Inc." Harvard Business School)通常の食料品ビジネスと比較して、Newman's Ownは、広告宣伝費比率が低かったことを記憶している。ドレッシングのラベルに大きくポール・ニューマンの似顔絵をプリントし、「利益全額社会還元」というスパイスを加えれば、広告いらずの差別化戦略が完成する。

そして、もう一言、蛇足かもしれないが、このドレッシングはかなり美味しかった。だから妻も私も、彼の名前を聞いて久々にドレッシングを思い出した。