日経新聞の一面に、これほど切ない記事を読むことは、もう一生ないだろう。

発端は6年前。トヨタ堤工場(豊田市)の班長、内野健一(当時30)が未明の事務作業中にイスから崩れ落ちて息を引き取った。妻の博子は労災と認めるよう国を相手取って提訴した。

争点は、製造工程などのカイゼンに取り組むQCサークル活動や「創意くふう提案」を業務とみなすかどうか。国側はトヨタの基準に沿って「業務外」と判断、倒れる前の残業は月間約50時間なので労災にあたらないと主張。原告側は「業務」だから155時間と訴えた。地裁は最終的に「事業活動に直接役立つもの」として業務と判断、国側敗訴の判決を下した。

亡くなった健一の父もトヨタマン。悲しみをこらえながら、博子に「自主活動は仕事ではない」と諭す。
(日経新聞2008年2月21日「働くニホン現場発」)

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仕事に誇りを持ち、懸命に働く日本の労働者。彼らは、ルールに縛られているわけではない。工場労働者も、介護ヘルパーも、勤務医も、そして小学校の教師も…。厳しい「現場」が日本を支えている。

山中