認知症についてのNHKスペシャルを見た。今回も素晴らしい内容で、NHKの受信料を心から払いたいと思うようになった。インサイダー取引への怒りも吹っ飛んだ。

番組の中でも特に涙を誘われたのは、認知症患者とその家族である。認知症の診断を二年前に受けたという後藤さんは、ハッピーな定年退職の夢が崩れ、絶望のどん底に突き落とされた経験を語った。実名を明かしてテレビに出演するとは、何という勇気だろう。

次にマイクを向けられた、後藤さんの奥さんは、こみ上げる感情を抑えることができず、しばらく話し始めることができなかった。すると、認知症患者の後藤さんは、「妻はあがり症だから」と奥様を気遣い、挙句の果てには言葉を失った奥様を見て、「どっちが認知症かわかんないな…。」会場は、暖かい笑いに包まれた。

絶望の淵で、どのように振舞えるか。どのように、周囲に明るさを与えられるか。死にゆく身体と薄れていく記憶の中で、輝きを放つ人間性。その素晴らしさには、心打たれるものがあった。